2003.10.10 台湾トイレ協会主催の観光山岳トイレ国際検討会で講演した内容をここに転載します。

「日本のエコロジートイレ」
 
中台光雄
 
リンフォース工業株式会社
神奈川県鎌倉市常盤258
TEL:0467-31-0500
FAX:0467-31-0504
 
 
屎尿を固液分離せず、便槽内で長期にわたり嫌気分解させ、液化した状態のものを液肥として使用します。
液肥は汲み出すことなく表面に近い土壌層に多孔管を用いて供給されます。
液肥は土壌中を毛管水として移動し植物に吸収されます。
植物に吸収されなかった液肥は土壌を通過浸透する間にきれいな水になるので、その水を便器の洗浄にも使い、また再度液肥として利用することもできます。
 
キーワード
 
液肥利用トイレ、環境保全

 日本では昔から尿尿を良く腐熟させて肥料として使用して来ました。しかし、その方法は施肥する時に植物の葉につくことや臭気や運搬が嫌われて次第に使われなくなりました。
 屎尿は便槽中と土壌中で分解され各種有機酸、アンモニア性窒素、硝酸、亜硝酸性窒素等の物質に変化します。植物はこれを吸収しますので決して汚い肥料ではありません。
 この方式は浄化槽でも屎尿処理場でも容易に除去出来ない窒素、燐などを植物に吸収させて植物を育てると共に川や池を富栄養化させない点で環境保全にも役立つものです。
 一番働いてもらう土壌中の硝酸菌、亜硝酸菌は土中温度15度〜25度程度が最適です。一年中温かい台湾では一番利用し易い方式です。
この方式では守らなければならない二つの条件があります。
 
1.一回の洗浄水量が、1リットル以下の簡易水洗便器を使用することです。
 簡易水洗便器とは水洗便器の水封トラップの代りに便器の排水口を皿状の円板で遮蔽し臭気を遮断し、0.3リットル〜1.0リットルの水で便器を洗う便器です。  便槽内の有機物濃度があまり薄くならないことが、嫌気菌による分解には必要です。尿尿量の10倍位までの洗浄水ですと大便や紙を良く分解します。
 又尿中にある塩分も肥料に適するように希釈されます。床下を利用して一人当たり一立方米位の大きな便槽を埋めればおよそ10年は汲み取りの必要がありません。
簡易水洗便器 断面図
2.必ず良い畑土の土壌を利用し地表から20cmくらいの浅い所に散水管を埋設し、表面土壌に棲息する微生物を十分に利用することです。地表から50cm位までの土壌は通気性があり好気性の土壌微生物が沢山活動している部分です。
 この部分の土壌に地下から水分や有機物を送り込むと、好気性微生物の働きにより分解され、植物に吸収され易い硝酸性、亜硝酸性の窒素に変わります。この通気性土壌中の土壌粒子間を過湿にならないように水分を移動させることが必要です。

 これに最も適した方法が50年前に新見正氏が開発した毛管浸透方式です。
 土の中では土壌粒子の周囲を水が薄い膜状で取り巻き、粒子は水を介してつながっています。この水を毛管水と呼びます。
 毛管水は土壌の間をつなぎ、
表面張力によって移動します。毛管膜は極めて薄い膜で、水は毛細管現象で下から上へ動きます。
 日照が続いて、地表が乾燥しても少しは湿っているのは、毛管水が地下水を毛細管現象で動かしているからです。
 
第一図に簡単な図を示しています。
毛細管現象
 このような簡単な構造ですが、毛細管現象を利用し微生物が最も数多く生きている地表近くに液肥を運び、しかも土壌間の空隙を水浸しにしないで移動し、その間に好気性微生物の働きを受けて有機質を無機質に変えていきます。
 一面は土壌粒子に付着する微生物に接触しながら、他方では土壌中の空気にも触れるというこの不飽和浸透方式が、液肥を作ると共に汚水を浄化していきます。
 いつも不飽和状態で水を土中に迭り、植物の根が腐らずに肥料分に富んだ水を吸収するのが、この方式の基本です。この方式のB型は植物に吸収されなかった液肥を地表から1m位の所に集水膜を設置して集めて再び散布する装置です。
 これを更に発展させて水の無い土地での山岳トイレに使っています。硝酸性窒素を含む透明な無臭な液肥を便器の洗浄に使います。電気のない所では足踏みポンプで汲出し、好評を得ております。
 
自動液肥供給装置Aタイプ
 
自動液肥供給装置Aタイプ
 大便槽を二槽に分け、嫌気分解された液肥を植物の肥料とします。便器は一回の洗浄水量が0.3リットルの簡易水洗便器を使用することによって、便槽の嫌気分解も有機物濃度が最適で、良質の液肥が得られるシステムとなっております。
 この発酵熟成された液肥を便槽からポンプアップし配管によって土中から畑の地下に埋設された散水管へ給水することによって、散水管から広く畑の地中に浸透し、自動的、衛生的、完全無臭の液肥供給装置となります。
 このシステムでは、土中散水管の左右約1mを畑にします。
 

システムの説明
@ 便器から
  汚物0.2L+洗浄水0.3L=0.5L/回
A 腐敗槽の第1室から、第2室へ移動する頃には、発酵が進み熟成された液肥になっている。
B 第2室からポンプアップされた液肥は畑の土中散水管へ入り、畑土に吸収されて、液肥として畑土を肥やす働きをする。
C 畑には栄養豊かな作物ができる。
D 液肥の供給は、自動的、衛生的、完全無臭などの状態で行われる。
Aタイプ システム図
 
自動液肥供給装置Bタイプ
 
自動液肥供給装置Bタイプ
 畑の土中から自動的に液肥を供給している装置内で、液肥の有機肥料分は植物に吸収されますが、一部は雨水などと共に下方へ移動します。液肥は移動中に土中微生物により硝酸性、亜硝酸性窒素に変わり水に溶けていますので、畑の下方を遮水膜で遮蔽し、貯まった水をソーラーによる電力を使って、水中ポンプで引き上げて、畑に散水します。
 このことは水分の循環を実現し、循環によって肥料分が再度植物に吸収され、余分な水分は空気中に蒸発散することになります。又遮水膜に溜まった水をポンプアップして簡易水洗便器の洗浄に使うことも出来ます。硝酸性窒素分のある無臭透明な水です。

システムの説明
@ Aタイプと同様の前段階の工程で畑へ供給された液肥は、一部雨水などと共に下方へ移動する。
A 畑の下方に遮水シートを敷き、水分を貯め、この水をポンプアップして、循環使用する。
B この下方に貯まった水には窒素などの栄養価が残っているので、ソーラー発電などによる電力でポンプアップする。
C ポンプアップした水は畑に散水し、作物に栄養を吸収してもらう。
D 余分な水分は空気中に蒸発散する。
Bタイプ システム図