●第16回全国トイレシンポジュウム

 土壌処理と山岳トイレ

                                                リンフォース工業株式会社
                                                開発室長 福田 智六 


@土壌処理の歴史
トイレの汚水処理に土壌を使う方法は、いつの頃から始まったのだろうか。日本国内では、昭和40年代に特許が数多く公告されて、現在につながる土壌処理の基礎が確立されました。
 かって、江戸時代にトイレ屎尿を畑地に肥料として散布する方式が確立され、そのおかげで、豊かな農作物を得ていたと同時に、当時世界一の衛生的都市生活が実現できたことは、広く知られているところです。
 これも土壌処理の一方式かと思われますが、現在行われている特許方式は、土中に汚水管を通して、悪臭も不衛生さも全く外に出さない状態で、長く目詰まりを発生しないで運用できるところに特長があります。
 この基本的工法を応用して、土壌処理トイレシステムを開発している各社は、多少の工夫による差異はありますが、基本的なところは共通です。

A土壌処理の山岳トイレへの設置例
  今年3月7日〜8日、日本トイレ協会主催の「山のトイレ事例発表大会」がありました。その資料集に報告されている土壌処理方式からの抜粋と、本年度の一部を加えたのが次の表です。
所在山域 所在地 設置場所
1. 奥多摩 東京都 雲取山荘前公衆便所
2. 北アルプス 長野県 槍ヶ岳槍沢ロッジ
3. 丹沢大山山塊 神奈川県 黍殻山避難小屋
4. 奥多摩 東京都 景信山園地
5. 朝日連峰 山形県 大朝日岳山頂避難小屋
6. 富士山 山梨県・静岡県 富士山頂
7. 南アルプス 山梨県 南御室小屋
8. 北アルプス 長野県 横尾山荘

  1・作例はすべて便器を水で洗う水洗方式で、その汚水は土壌処理されているものです。
  2・便器を水で洗う水量には2種類あります。
   a)8リットル〜10リットル/回(公共下水道・浄化槽で使う水洗トイレ)
   b)0.25リットル〜0.5リットル/回(汲取トイレで使う簡易水洗トイレ)
  3・簡易水洗0.25リットル十人の屎尿=0.5リットル〜1.0リットルの汚水を嫌気で前処理した後、土壌処理槽で浄化し、その水を繰り返し便器洗浄水として利用するタイプがあります。

Bリンフォース工業が開発した土壌処理山岳トイレ
 リンフォース工業は簡易水洗便器を作って30年になります。スタート当時、便槽へ便器洗浄水を流入させることが屎尿処理場で問題になって、それを少しでも減少させるために工夫したのが、便槽汚水を敷地内で処理する土壌処理工法でした。 全国で約10,000例ほど施工しました。昭和50年にこの工法をスタートし、更に昭和54年からは嫌気便槽の中間水を液肥として利用し、花壇や野菜を栽培する家庭緑化ユニットを発売しました。この方式は屎尿を肥料として利用したものです。約10年間でこの仕事は終わりましたが、この技術を今回山岳トイレ開発に応用しました。
 そして完成したのが、「水も電気もない山岳地帯で、何のエネルギーも使わず、汲み取りの必要もなく、汚水をキレイに浄化して、繰り返し便器の洗浄水として使うという水洗トイレの理想を追求して完成したのが、このトイレシステムです。」

このシステムの代表的施工例を上げますと、
○1998年度は富士山頂浅間神社職員トイレ(処理水BOD値は6.2ppm 静岡県調べ)
○1999年度は大朝日岳避難小屋トイレシステム (冬期も使用)(磐梯朝日国立公園内)
○2000年度は南アルプス鳳凰三山南御室小屋トイレ (土壌処理槽地面で野菜栽培)
いずれも使用状況は良好です。

C土壌処理方式の今後の展望
 江戸の昔に行われていた屎尿の土壌還元は、人々に豊かな作物と衛生的な都市生活を長く続けさせてくれました。これは地球に備わっている食物循環を無理なく実現していたからです。
 今後のことを考えますと、土の持つ力を生かして、よりよい21世紀を創れるだろうか。そのためのひとつのモデルケースとして、極限地の山岳トイレがあると思います。ここで行われている自己完結型トイレとは、自分で汚物処理まで完結する方式のことです。極地である山岳で廃棄物を残さない工法が確立すれば、それはいずれ都市部へ応用できることです。また、山では出来るだけエネルギーを使わない目標もあります。これも21世紀の大きな問題点です。
 これらの事を実現してくれるのが、土壌処理方式の中にあると思います。また、南御室小屋オーナーが土壌処理槽の上で野菜畑を作ったように、21世紀の食糧問題にも及ぶ、次世代トイレのひとつの解答がここにあると思います。